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平成を駆け抜けた仮面ライダーたちについて・私評

 Twitterポケモン映画全作品の感想まとめみたいなのを上げている人がいたので感化されて久々に文章を書きたくなりました。ちょうど今日は平成仮面ライダー最後の作品『ジオウ』の最終回なんで図らずしもタイミングも良いですね。仮面ライダーなんて子供の見るもの、なんて誤解されている人もいらっしゃるかもしれませんが是非ご一読いただきちょっとでも興味持ってくれたりすると嬉しいです。

仮面ライダーは「昭和」「平成」という元号のくくりで大まかに分けることができます。なぜ元号で分けるのかといいますと昭和最後のライダー『仮面ライダーBLACK RX』の後10年間放映がなく、またその間に原作者の石ノ森章太郎先生が亡くなられたということから、ちょうどこの10年を境に作風が大きく異なってくるからです。

そして平成10年2000年の『クウガ』を嚆矢にいわゆる「平成ライダー」が始まり、以降20年間途絶えることなく続いてきたという訳です。平成ライダーの面白いところは謂わば「何でもあり」なところで、「如何にしてこれまでの慣習やお決まりをブチ破っていくか」について東映はずっと頭を悩ませてきました。それは例えばライダーの奇抜なビジュアルであったり、また作風も近未来SFから和風なもの、探偵ものや学園ものなんかもやりました。それらはひとえに仮面ライダーという大きなコンテンツでありながらもそこに胡坐をかいていたら子供たちに飽きられてしまうという覚悟、言い換えれば挑戦的な姿勢、もっと言えば「俺たちが新しいコンテンツを作るんだ」という作り手の気概を感じます。また子供向け番組だからと言ってレベルを下げることをせずむしろ大人の視聴にも応えるようなものを作る、というのが平成初代『クウガ』という作品であり、それは脈々とその後の作品にも受け継がれたりされてなかったりします。20作もあると中にはちょっととんでもない方向に行ってしまった作品もありますが、それはそれでその後の反省となったりしているわけです。

またちょうど平成ライダーは20作品なので、最初の『クウガ』から10作目『ディケイド』までを平成1期、11作目『W』から今日で放送が終了した20作目『ジオウ』までを平成2期とも呼びます。ここではその中でも平成2期群について取り上げます。作風も1期はややハードで2期は明るめのものが多いという違いがあります。平成1期もいい作品が多いのですがやはり10年以上も前の作品だと服装やセリフ回しとかが昔っぽかったりCGがお粗末に見えてしまったりするので平成2期のうちのどれかから見始めることをオススメします。

また偉そうにつらつらと書きますが私なぞ去年から仮面ライダーを見始めたいわゆる「にわか」ですので、至らない点が多くあるかと思います。個人的な意見として大目に見ていただけると幸いです。

 

仮面ライダーW』2009~10

名作です。今後の仮面ライダーの方向性を確立した、エポックメイキング的な作品。単純に出来がひたすら良い。ファンも多く、放送終了10年後になった今でも漫画版の続編が出ているほど。

「W」はダブルと読み、つまりいわゆるバディもの。片割れの1人が今を時めく菅田将暉。主人公2人で変身する設定で、菅田将暉は変身する際に意識を失いもう1人のほうに精神が移る。2人それぞれ3つの能力を持ち、相手によって多彩に組み合わせて戦う戦闘スタイルで、フォームチェンジというのはこれまでの平成ライダーの特徴でありましたが「組み合わせ」というのは初めてで今後の作品でも多々出てくるようになります。この作品で凝っているのが敵怪人で、まるで漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のごとくザコ敵でもいろいろ策を講じて厄介な能力で攻撃してくるので、視聴者が飽きがこないように工夫してある。町の平和を脅かす悪党集団と町を守る探偵コンビというストーリーも分かりやすい(この設定もなんだが『ジョジョ』の4部っぽい)。進行としては毎回探偵のところに何か悩みを持った依頼人が訪問してきて、もちろんそれらすべての事案は怪人が絡んでいる訳だが、それを謎解きも絡めながら前半・後半の2話で攻略していくのが基本的な流れ。この構成は見ていて分かりやすく、『W』以降『ウィザード』まで踏襲されることとなる。

キャラクター的に最も愛着が湧いてしまうのは、主人公2人も勿論だがむしろ2人目(3人目?)のライダー、仮面ライダーアクセルこと照井竜。刑事なのだが登場時は本当に他人と接することに問題が大アリだったのだが、主人公グループと接するうちに徐々に人間性を取り戻し馴染んでいく様がいい。平成仮面ライダーは大体主人公と別にもう1人ライダーが登場し、2号ライダーと呼ばれライバル役をすることが多いが、最も模範的な2号ライダーだったといえましょう。

ライダーのビジュアルもOPも文句なくカッコよく、平成2期として最高の出来。最初に見るには絶対おすすめ。アマゾンプライムで視聴可能。

 

仮面ライダーOOO』2010~11

「オーズ」と読みます。秀作、お気に入りです。バディもの・お悩み解決の2話構成・アイテムによる能力組み合わせで戦うなど前作『W』の成功した要素を踏襲しながらも、新たな設定により別物として昇華することに成功した作品。

今作はライダーと怪人というコンビであり、最初はお互い利用し利用される相容れない関係であったものの、だからこそストーリーが進むほど生まれていく絆がより一層感動的なものとなっています。また戦闘も変身用小物のメダルが敵にとっても重要なパワーアップアイテムのため、これの奪い合いにより双方の戦力が変化するという設定も秀逸で飽きが来ない。

また「欲望」という日曜の朝に似つかわしくないテーマも上手く描き切ったと思います。ゲストキャラは皆、物欲や金銭欲、食欲、有名になりたいなどなど抱えておりそれらを解決する中で主要キャラも自らの欲と向き合う訳です。子供向け番組なら陥りそうな、「欲張りは良くないよ!」みたいな教科書的な説教は決して口にせず「いかに己の欲と折り合いをつけるか」ということを言ってくるので見ていて「なるほどなぁ」と思わせられる。

この作品は何よりパートナーである怪人、アンクというキャラクターの魅力が爆発している。子供向け番組にらしからぬ風貌に随所に見せる可愛らしさ、そして俳優三浦涼介氏のハマリ役具合がハンパじゃない。

残念ながら放送中に東日本大震災が発生しモロに影響を受けた後半は失速が否めないが、それを差し引いても平成2期でも間違いなく上位に入る佳作。OPを大黒摩季が歌っており爽快感に溢れていてメチャクチャにいい。

 

仮面ライダーフォーゼ』2011~12

今や国民的俳優、福士蒼汰のデビュー作。リーゼントのツッパリだが友情に溢れるという難しい役だったが見事に演じていると思う。ヒロインとして元・清水富美加さんも出ている。天然の幼馴染キャラをやっており、1年間通して全てのカットで可愛い。

作品としては残念ながら凡作の印象。仮面ライダー初の「学園もの」をやりたかったようだが、もう1つのテーマ「宇宙」と極めて相性が悪かった。それでも前半はしっかりと学園ものをしていて、狭い学校生活で陥りがちな「○○グループ」に分かれて生徒が生活しており、そこに「全生徒と友達になる」と豪語する転校生の福士蒼汰が強引ながらもグループの垣根を越えて、闇落して怪人になってしまった生徒を救うことで友情を築いていくというストーリーはしっかりと「学園仮面ライダー」をしていて素晴らしかった。関係ないが序盤はヒロインのお色気シーンもある!後半はひたすらに「学園もの」要素のほうが足を引っ張り、築き上げた仲間もただの賑やかしに落ちぶれてしまったのが非常に残念。

アマゾンプライムで以前は視聴できたものの、現在はできないよう。

 

仮面ライダーウィザード』2012~13

凡作。主人公は指輪で変身する魔法使い。魔法を使った戦闘は、序盤は楽しいものの段々飽きる。ストーリー進行も遅く、お決まりパターンも多い。決定的にダメというわけではないが、逆にいいところというのも中々難しい。ヒロインの女の子が小動物系で守ってあげたくなる感じが非常に出ていて可愛い。変身時のベルト音声がメチャクチャやかましい。シャバドゥビタッチヘーンシン

アマゾンプライムで視聴可。

 

仮面ライダー鎧武』2013~14

異色作。「錠前で変身するフルーツ侍ライダーのバトル」というトンデモ設定もいいとこで仮面ライダーもここまで来たかという感じがあるが様々な面でその後の作品に大きく影響を与えた作品でもあります。というものの『W』以降恒例だった2話構成というのが前作『ウィザード』にて限界を迎えたようで、では1年間の約50話をどう進行させるかというのが命題であったわけですが、脚本の虚淵玄氏は1クールごとに目的や敵を交代させる、長期連載の少年漫画にあるような(例えば『ワンピース』だったら「空島編」「アラバスタ編」などのような)方式を採用したのがこの作品。毎クールで主人公もパワーアップし、なるべく視覚的にも分かりやすいように努めているのでしょうが、作品全体を通してみても「大人の大きな思惑に利用される少年少女」「変えることのできない運命」「地球に侵攻する異種生物」などかなりハードかつ難解。間違いなくこの作品がその後のライダーが子供向けに大きく舵を切るきっかけになった。『魔法少女まどか☆マギカ』を彷彿とさせるオチ。

序盤の視聴のしんどさが尋常じゃないです。主人公チームはダンスチームなのですが、ダンスも歌も衣装もとにかく何もかもダサいし、展開も遅い。中盤くらいからエンジンがかかってきて面白くなる。

個人的にこの作品でお気に入りなキャラクターがミッチこと呉島光実、仮面ライダー龍玄。兄という存在に憧れと嫉妬を抱きながら悪の道に唆され、結果として身を滅ぼしてしまう様が悲しくて良い。中盤以降のかき回し具合というか、「何をしでかすか分からなさ」もストーリーを面白くしていた。

ちなみに『鎧武』はガイムと読みます。アマゾンプライムで視聴可。

 

仮面ライダードライブ』2014~15

今や誰もが知る、「国民の彼氏」と称される竹内涼真氏のデビュー作。

仮面「ライダー」でありながらバイクに乗らず車を運転するというある意味「反則技」を使いながらも、そのほかの面で特に挑戦した印象もなく、前作『鎧武』がかなりぶっ飛んでいたからというのもあるでしょうが、無難で大分落ち着いた作品。逆に言えば癖がなくオススメしやすい。刑事である主人公が怪人の集団を討伐するというわかりやすい大道ストーリーですし。ただ途中で「いい怪人もいる」という問題を定義しながらも結局は「子供向け番組」だからとナァナァにして主人公が明確な答えを出せずにいた印象。前作の反省を受け子供向けを意識したからなのか、身内キャラのギャグがやや多めで人によってはキツイかも。

個人的にこの作品で最も残念だった点は、2号ライダーのマッハこと詩島剛というキャラクターの扱いですね。登場時はアメリカ帰りでひたすら明るく場をかき乱す、「どうやらコイツは今までのライダー作品には存在しなかったとんでもない奴だ、これからどうこいつを転ばせていくか楽しみだ」とまで思わせておきながら、その後中々扱いに困ったようで、ストーリーが進行するほどよくいるただの苦悩キャラになってしまった。

ヒロインである内田理央の警官コスプレ姿がひたすら可愛く、竹内涼真の今では見れないような演技も含め、キャストだけでも見る価値ある。

アマゾンプライムで視聴できる。

 

仮面ライダーゴースト』2015~16

すみません、唯一の未視聴です。

『ゴースト』以降の作品はアマゾン未公開です。

 

仮面ライダーエグゼイド』2016~17

「ゲーム」「医療」というミスマッチとしか思えない2つのテーマ、ピンク基調のカラーリングで2頭身というデザイン、子供向け番組では描写に限界がある中で「命」を扱うと、どう考えてもコケそうな要素しかないのだが、これらが何の間違いか相互作用して大成功してしまったというとんでもない作品。「仮面ライダーとしての既存の概念をぶち壊す」「大人の視聴にも応える」という点で、ここにきて平成2期は集大成を迎えた、「快作」もしくはある意味「怪作」といってもいいのかもしれません。

恐ろしいのは全話を通して全くダレることがなく、毎回次の話が気になるストーリーは圧巻で、もしこれをリアルタイムで観れていたらますます面白かったんだろうなあと思います。

この作品はキャラクターもよく出来ており、特にEXILE系で仮面ライダーに初めて起用された小野塚勇人氏演じる九条貴利矢と岩永徹也氏の怪演が光る檀黎斗は大人気を博しました。個人的には無免許医の花家大我と女子高生ゲーマーのニコちゃんのカップルがお気に入りで社会のつまはじきもの的な2人が衝突しながらも心を通わせていくのが素晴らしい、仮面ライダーに登場する中でもベストカップルとして推します。とはいえ主人公もキャラ負けしておらず医者としての「命」を貴ぶ気持ち、ゲーマーとしてのその異様なまでの目的遂行能力、そして歴代ライダー最強論議筆頭レベルの強さはまさに主人公。

オープニングは三浦大知氏の「EXCITE」。仮面ライダーのオープニング曲でここまでヒットしたのも他に無いんじゃないでしょうか。映像もカッコいい。総じてオススメできる作品です。

 

仮面ライダービルド』2017~18

個人的にお気に入り。序盤から中盤くらいまでのテンポの良さとストーリーの読めなさと言ったら素晴らしく、また「科学」「戦争」といった真面目で大人向けなテーマと近未来SFっぽさが個人的にツボでした。人体実験された記憶喪失の主人公、敵対する謎の組織と怪人、背後に存在する国家の思惑とかなり王道ヒーローもの。日本が3分割され争うという設定なのですがただ「戦争」については中々日曜の朝から放映するにはいささか限界があったようでかなり描写として妥協が見えます。残念ながら後半になるにつれ設定を持て余し失速していきました。ただオチはかなり秀逸で平成2期でも随一。

しかしとにかくこの作品はライダーのビジュアルがひたすらにカッコいい。前作がビジュアル面でかなり変化球だったからなのか、『ビルド』はどのライダーもアメコミのメタルヒーローのようで動いてるだけで映える。

主人公役の犬飼貴丈さんの演技も見事です。ストーリーの設定上、2役3役くらいを演じたのですが全く違和感なく演じきりました。朝ドラにも出演中で、今後の活躍が期待される俳優さんです(ライダーから朝ドラの流れは佐藤健氏や竹内涼真氏などが歩んだいわば出世街道)

 

仮面ライダージオウ』2018~19

駄作。最後の最後にして最低点を大きく更新してしまった。平成ライダー最終作として銘打ち、これまでの作品に登場したキャラクターが客演するのが大きな魅力。だがせっかく客演してもらったにもかかわらず殆どのキャラが『ジオウ』主人公の引き立て役とされてあまりにもひどい扱いで過去作ファンなら怒りを覚えずにはいられない。そもそも「歴代のライダーの世界を冒険する」というのが10作目の『ディケイド』の二番煎じ、時空間系のやけに小難しい設定も説明不足、キャラクターの魅力のなさなど指摘する点は大いにあるがこの作品にもファンはいらっしゃる思うのでここまでにしておきます。公式自ら「端折ったのでよくわかんなくなっちゃってます」「細かいことは気にすんな」と言い訳する始末。9月からの新番組に期待です。

 

番外『仮面ライダーアマゾンズ

一般的な「平成ライダー」には含まれませんが一応。Amazonオリジナル作品として作成され、ニチアサではなくアマゾンプライムにて公開された作品。昭和ライダーでも異色作の『仮面ライダーアマゾン』のリブート。ではあるものの作風は大きく異なり、どう表現すべきか難しいですが「SFホラー」といったところ。1期と2期があり1期は上手くまとまっており力作だが2期はひたすらに主人公いじめが続き見ていてとてもつらい。どちらも完全にキッズなど念頭に置いておらずTVじゃできないことをやるという信念じみたものを感じる、よってグロテスクな表現もかなり大目ですが大人向けに作られているだけあって「生きる」とは何かという問題にかなり切り込んでおり見ごたえはあります。そのあたりに免疫のある方でしたら1期はとてもオススメです。

主人公のアマゾンオメガは初代アマゾンを平成バージョンとしてリメイクした見た目で割とヒロイックでかっこいい。当然アマゾンプライムで視聴できます。

 

 ということで初めて見るのにオススメなのは『W』、ついで『OOO』『ドライブ』『エグゼイド』『ビルド』もしくは『アマゾンズ』辺りでしょうか。アマゾンプライムで見られる作品も多いですができない作品は「東映特撮FC」という公式アプリをダウンロードし月額960円払えばどのライダーもついでに戦隊も見放題です。

簡潔に書いたつもりですが好きな作品は結構思うがままに書いてしまいました。ちなみに9月から始まる令和初のライダーは『仮面ライダー01』。ライダーはバッタモチーフで原点回帰を意識しつつもテーマは現代に沿った人工知能AIを取り扱うそう。前述のとおり仮面ライダーにとって元号一発目はかなり重要ですので期待が高まります。